Shopifyで卸売(BtoB)を始めようとすると、最初に本体の機能で足りるのかという疑問にぶつかります。先に結論を書きます。Shopify本体のB2B機能はBasic・Grow・Advanced・Plusのいずれでも使えますが、使える範囲がプランで違います。Plus以外は使えるカタログの数などに制限があるので、そこで足りなければアプリを入れるか、卸の注文だけ手作業で回すかになります。
この記事は、すでにBtoCのShopifyストアを運営していて、そこに卸の取引先が数社〜数十社ぶら下がりはじめた規模を想定しています。並べる6本のうち、無料プランがあるのは1本だけ、日本語UIが用意されているのも1本だけです。この2点で候補はかなり絞れます。
まずShopify本体のB2B機能を確認する
Shopifyには会社アカウント・カタログ(価格表)・支払い条件といったB2Bの仕組みが本体機能として用意されています。Basic・Grow・AdvancedでもB2Bは使えますが、カタログ機能を使うにはストアが新しいShopify Marketsを利用している必要があり、有効にできるカタログは全B2Bマーケット合計で3件までです。カタログを会社や会社所在地へ直接割り当てる顧客単位の価格設定、カタログ数の無制限化、デポジットの要件・一部決済・フルフィルメントごとの支払いリクエストはShopify Plus限定です。細かい仕様や料金は変わることがあるので、自分のストアで何が使えるかはShopifyの管理画面とヘルプで確かめてください。
Plus以外のストアで標準機能では足りないとき、アプリで補う候補になるのは主に次の4つです。なお数量ルール・数量別価格・支払い条件(掛け払い)・下書き注文の請求書発行は全プランの標準機能にあるので、3と4はそれを超える要件がある場合の話です。
- タグ別の卸価格。特定の顧客タグが付いた人にだけ卸価格を見せる
- 卸の会員登録と承認。誰でも卸価格を見られては困るので、申込フォームと承認のフローが要る
- 最低数量・数量割引。MOQや段階価格は本体の数量ルール・数量別価格でも設定でき、アプリはタグ別など追加の価格ルールが要る場合に使う
- 掛け払い・請求書払い。本体でも支払い条件と下書き注文の請求書発行ができ、アプリは外部の与信・請求サービスとの連携が要る場合に使う
4つ全部が要るとは限りません。取引先が数社で、価格だけ分けられれば十分という店もあります。逆に、掛け払いだけが目的なら卸売アプリより請求書払いの入れ方を先に読んだほうが早いこともあります。
比較表: 価格と無料枠(2026年8月時点)
Shopify App Storeの掲載ページで確認できた範囲を並べます。価格は掲載時点のもので、変わることがあります。導入前に各アプリのページで確かめてください。
| アプリ | 無料枠 | 有料プラン | 日本語 | 評価(レビュー数) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
B2B卸売価格割引 | なし(14日間の無料体験) | 基本的 $24.99/月 〜 グローバル $64.99/月 | 日本語に対応 | 4.9(733件) | 顧客タグ別の卸価格。上位で後払い条件・複数通貨 |
B2B Wholesale Hub | なし(14日間の無料体験) | Basic $39/月 〜 Premium $99/月 | 英語のみ | 4.7(702件) | 小売と卸を1店舗で。POS・Flow連携 |
SparkLayer B2B & Wholesale | Basic 無料(価格リスト3件・月5注文まで) | Starter $49/月 〜 Pro $299/月 | 英語のみ | 4.9(385件) | 注文数で段階課金。会計・在庫システム連携 |
Wholesale Gorilla | なし(21日間の無料体験) | Lite $34.95/月 〜 Premium $149.95/月 | 英語のみ | 4.8(317件) | 価格ルールと顧客グループが無制限。商品ロック |
Wholesale ‑ All in one | なし(14日間の無料体験) | Basic $24/月 〜 Business $39/月 | 英語のみ | 4.9(278件) | 卸と小売の割引をまとめて。上限$39 |
Charge Me Later | なし(4日間の無料体験) | Basic $9.99/月 〜 GOLD $29.99/月 | 英語のみ | 4.9(152件) | 後払い(Pay Later)特化。自動請求書 |
評価は6本とも4.7〜4.9に収まっていて、星の数では差がつきません。差が出るのはレビュー数のほうで、多いB2B卸売価格割引とB2B Wholesale Hubは700件台、少ないCharge Me Laterは152件と、5倍ほどの開きがあります。レビュー数は導入数そのものではありませんが、使われている規模の目安にはなります。評価とレビュー数は2026年9月29日に各掲載ページで確認した値です。
無料体験の長さもばらつきます。Wholesale Gorillaの21日間が最長で、Charge Me Laterは4日間です。卸売アプリは価格表を作り込んでから取引先に見せて初めて検証になるので、体験期間の日数はそのまま「検証できる深さ」に効きます。
選び方の軸
アプリを比べる前に決めておくことがあります。卸をBtoCと同じストアで見せ分けるのか、卸専用に別ストアを立てるのかです。同じストアなら顧客タグで価格と表示を切り替えるので、この記事のアプリが効きます。別ストアなら卸側の商品構成と価格をまるごと分けられるぶん設計は素直ですが、在庫と商品情報を二重に持つ運用コストが毎日かかります。取引先が十社に満たないうちは、同じストアで見せ分けるほうが現実的です。
軸の1つ目は用途です。今回の6本は、大きく3種類に分かれます。卸価格の出し分けが主目的のもの、卸専用の入口と承認フローまで持つもの、支払い条件(後払い・請求書)に寄せたものです。多機能なアプリは3つとも持っていますが、そのぶん月額が上がります。自分に必要な種類を先に決めてください。なお、会員ランク別の割引を配りたいだけならB2Bアプリは重すぎます。その用途は割引アプリの比較のほうが合います。
2つ目は無料枠です。無料プランがあるのはSparkLayerだけで、残り5本はいずれも無料体験の期間があるだけです。体験期間が終われば月額が発生します。しかも卸売アプリの月額は$24.99〜$39あたりから始まり、機能を足すと$100を超える帯まで伸びます。BtoC向けアプリの相場より一段高いので、卸の粗利で吸収できるかを先に計算しておいてください。
3つ目は日本語です。掲載ページで日本語に対応しているのはB2B卸売価格割引の1本のみで、他の5本は「このアプリは日本語に翻訳されていません」と明記されています。卸売アプリの英語は、管理画面だけの問題では済みません。取引先が見る申込フォーム、承認完了の通知、最低数量に届かないときのカート内のエラー文言まで英語で出ます。買い手が法人担当者とはいえ、そのまま出すか自分で文言を差し替えるかの判断は要ります。
各アプリの位置づけ
B2B卸売価格割引(Wholesale Helper)は、今回の6本で唯一、アプリ名から機能一覧・価格プランまで日本語で掲載されているアプリです。対応言語には日本語のほか英語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・中国語などが並びます。プランは4段階で、基本的 $24.99/月が顧客グループ・顧客タグ付け・パーセンテージ割引・最低カート要件、プロフェッショナル $44.99/月で卸売サインアップフォームとバリアント個別価格、後払い条件(15/30/60日)が加わります。企業 $49.99/月でボリュームディスカウントと一括インポート、グローバル $64.99/月でShopify Markets統合とVAT・免税価格に対応します。日本語で運用したい、かつ卸価格の出し分けから後払いまで一本で賄いたい店の第一候補です。
B2B Wholesale Hub(Orbit、旧Wholesale Club)は、小売と卸を1つのストアで運用する構成を正面から想定したアプリです。Basic $39/月にパーセンテージ割引・クイックオーダーフォーム・手動注文・登録フォームが含まれ、Professional $69/月でバリアント別価格・Net terms(Net30/15)・数量割引・最低注文数、Premium $99/月で商品の表示制御とロック、詳細な分析が加わります。連携先にShopify POSとShopify Flowが挙がっているのが他社と違う点で、実店舗を持っていて卸も回す店や、承認後の処理を自動化したい店に向きます。年払いで10%割引、14日間の無料体験がつきます。
SparkLayer B2B & Wholesale は、今回唯一の無料プランを持つアプリですが、無料枠は価格リスト3件・月5注文までという切れ方です。試すには十分でも、取引先が増えたらすぐStarter $49/月に移ります。以降はGrowth $149/月で月100注文、Pro $299/月で月150注文と、注文数で段階が上がる課金です。上位プランには見積機能、PDF請求書、営業担当(Sales Agent)向けのポータル、Xero・QuickBooks・Cin7・Katanaといった会計・在庫システムとの連携が並びます。卸が事業の主軸で、営業担当が代理で受注を入れるような体制なら、費用に見合います。逆に卸が月数件の店には過剰です。
Wholesale Gorilla は3段階のシンプルな構成です。Lite $34.95/月の時点で価格ルールと顧客価格グループが無制限で、基本の登録フォームと手動注文が使えます。Advanced $69.95/月でクイックオーダーフォーム、卸専用の配送ルール、Net terms、商品の非表示、CSVでの価格アップロード、テーマ統合が加わり、Premium $149.95/月で数量割引とページ単位のロック、カスタマイズ可能な登録フォームまで届きます。21日間の無料体験は今回の中で最長で、価格表を作り込んで取引先に触ってもらうところまで無料で試せます。価格ルールの本数が多い店に向く構成です。
Wholesale ‑ All in one(DigitalCoo)は、最上位でも$39/月に収まるのが特徴です。Basic $24/月で個別・カスタム価格、顧客グループ別価格、卸売サインアップフォームの埋め込み、アカウント承認、手動注文まで入ります。Professional $29/月で数量割引と最低・最大注文制限、Business $39/月で卸と小売の割引管理と注文単位割引が加わります。掲載ページでは、Net Terms・クイックオーダーフォーム・一括インポート・ロック管理・ログイン後の価格表示・MOQが全プラン共通の付加機能と説明されています。月額を$40以下に抑えたまま卸の一通りを揃えたい店の候補です。年払いで17%割引がつきます。
Charge Me Later(Buddy Apps)だけは毛色が違います。卸価格の出し分けよりも、後払いに寄せたアプリです。Basic $9.99/月で、全顧客または特定顧客に対してPay Laterを開放し、注文時に顧客がPay NowとPay Laterを選べるようにできます。自動請求書の送付もここに含まれます。PLUS $19.99/月で商品・バリアント別の割引価格、顧客グループへのカスタム価格、Net Termsの付与が加わり、GOLD $29.99/月でPay Now時のチェックアウト価格もカスタムできます。掲載ページには、クーポンコード方式は使わないと明記されています。無料体験は4日間と短めです。掛け払いさえ通れば価格は個別に相談する、という商習慣の卸には合います。
迷ったときの決め方
条件で絞ります。
- 日本語のまま運用したい、または英語の文言を差し替える工数を取れない → B2B卸売価格割引の一択です。他の5本は英語のみです
- まず無料で形にして、社内に見せてから決めたい → SparkLayerのBasicで価格リスト3件・月5注文まで試します。ただし本番運用に乗った時点で$49/月からになる前提で見てください
- 欲しいのは掛け払いだけ、価格は個別対応でよい → Charge Me Laterが$9.99/月で最も軽い構成です
- 実店舗があり、POSやShopify Flowと絡めたい → B2B Wholesale Hubが連携先に挙げています
- 月額を$40以下に抑えて卸の一通りを揃えたい → Wholesale ‑ All in oneのBasic $24/月から始めます
- 価格ルールを大量に持ちたい、じっくり検証してから決めたい → Wholesale Gorillaが無制限の価格ルールと21日間の体験を用意しています
どれを選んでも、卸専用の商品をどう見せるかは別途決める必要があります。商品のロックや非表示は各アプリの機能ですが、その前段の「卸向けの並べ方」はストア側の設計です。コレクション構成の考え方に整理しています。全カテゴリの一覧はShopifyおすすめアプリまとめにあります。
まとめ
- Shopify本体のB2B機能はBasic・Grow・Advanced・Plusで使えます。非Plusはカタログ3件まで(新しいShopify Marketsの利用が前提)などの制限があるので、標準機能で足りない場合にアプリを検討します
- アプリで補うのは主に4つ。タグ別の卸価格、卸の登録と承認、標準の数量ルールを超える数量割引、外部連携が要る掛け払い・請求書払いです(数量ルール・支払い条件・下書き注文の請求書は全プランの標準機能)
- 無料プランがあるのはSparkLayerのみ(価格リスト3件・月5注文まで)。残り5本は無料体験のあとに月額が発生します
- 日本語で掲載されているのはB2B卸売価格割引の1本だけ。他5本は英語のみで、取引先が見るフォームや通知の文言も英語です
- 月額は$9.99〜$299と幅があります。卸の粗利で吸収できる帯を先に決めてから機能を見てください
- アプリを比べる前に、BtoCと同じストアで見せ分けるか卸を別ストアにするかを決めます。取引先が十社に満たないうちは同じストアが現実的です
参照元
価格・無料枠・対応言語は、次のShopify App Store掲載ページを2026年8月25日に、評価とレビュー数は2026年9月29日に確認したものです。
B2B卸売価格割引・B2B Wholesale Hub・SparkLayer B2B & Wholesale・Wholesale Gorilla・Wholesale ‑ All in one・Charge Me Later, Wholesale app