「請求書で払いたい」という問い合わせは、法人のお客様が増えると必ず来ます。Shopifyの管理画面にも「請求書を送信」というボタンがあるので、これで対応できると思って開くと、想像と違うものが出てきます。
先に結論を書きます。Shopifyの「請求書を送信」は、支払いを依頼するメール(チェックアウトへのリンク)を送る機能です。日本の商習慣で言う「月末締め・翌月末振込の請求書」ではありません。両者は名前が同じだけの別物なので、まずここを分けて考えます。
「請求書」の2つの意味を分ける
- 支払い依頼としての請求書 — この金額を払ってください、という案内。Shopifyの「請求書を送信」はこちらで、メールのリンクからオンラインで決済してもらう流れです
- 経理書類としての請求書 — 取引の証憑として渡す書面。宛名・登録番号・税率ごとの内訳が入り、先に商品を渡して後で振込を受ける取引(掛売)で必要になります
お客様の依頼がどちらなのかで、必要な作業が変わります。「請求書ください」と言われたら、支払い方法の希望(カード払いか振込か)を先に確認するのが最短です。
支払い依頼として送る: 下書き注文+請求書を送信
オンラインで決済してもらう前提なら、Shopifyの標準機能で完結します。
- 管理画面の「注文管理」→「下書き」で下書き注文を作成する
- 商品・数量・送料・値引きを入れる(電話やメールで受けた注文をここで組みます)
- 決済のセクションで「請求書を送信」をクリックする
- お客様にチェックアウトページへのリンクを含むメールが届く
お客様がそのリンクから決済を完了すると、下書きは通常の注文に変わり、自動的に支払い済みになります。カード情報を電話で聞き取る必要がないので、電話・メール・SNSのDMで受けた注文をオンライン決済に着地させる手段として使えます。BtoBに限らず、実店舗の取り置き商品を後から決済してもらう場合にも使い方は同じです。
送る前に、メールの文面を直せる
「請求書を送信」を押すと、送信前に件名とメッセージを確認・編集する画面が出ます。ここで書き換わるのは、その1通ぶんの本文だけです。「お振込先は下記のとおりです」「お支払期日は◯月末です」のように毎回同じことを書くなら、テンプレート側を直しておくほうが早いです。
テンプレートは管理画面の「設定」→「通知」→「下書き注文の請求書」を開き、右上の「コードを編集」から編集します。中身はHTMLとLiquidで、構文が壊れていると保存できません。編集前に、いまのコードを全文コピーしてどこかに保存しておいてください。 編集画面の「デフォルトに戻す」は、そのテンプレートのカスタマイズをすべて破棄してShopifyの初期状態に戻す操作で、直前の1行だけを取り消すものではありません。保存したら「プレビュー」で表示を確認します。
なお、支払期日は文面に書くだけでなく、注文の決済条件としても設定できます。請求書を送信すると支払期日が入るので、期日そのものはShopifyの中で持てます。督促の運用は後述します。
掛売(後払い)で受ける: 銀行振込を足す
「商品を先に送って、月末締めで振り込む」という取引にする場合、決済側の設定が必要です。Shopifyの手動決済に銀行振込を追加すると、チェックアウトで選べるようになります。
このとき運用で押さえる点が2つあります。
注文は入金確認まで未払いのままです。 手動決済の注文は、こちらが「支払い済み」にするまで未払い扱いです。出荷のタイミングを入金前にするか後にするかは、与信の判断そのものなので先に決めておきます。
注文確認メールは入金の証明ではありません。 銀行振込の注文では、注文確認メールが届いた時点でまだ支払いは済んでいません。お客様に「領収書として使えるか」と聞かれたときは、入金確認後に別途発行する運用にしておくのが安全です。この区別はShopifyで領収書を発行する方法まとめにも書いています。
経理書類としての請求書PDFはどう出すか
Shopifyには、日本の体裁の請求書PDFを出す標準機能はありません。選択肢は領収書と同じ構造になります。
- 無料のOrder Printerでテンプレートを作る — 請求書を含む書類を印刷でき、テンプレートはHTML・CSS・Liquidで編集できます。日本の体裁(宛名・振込先・支払期日)に合わせるにはLiquidの編集が必要です
- 帳票アプリを使う — 件数が多い、宛名や支払期日の差し替えが頻繁にあるなら、テンプレートの作り込みをアプリに任せる段階です
どちらを選ぶ場合も、事業者向けの請求書ならインボイス(適格請求書)の記載事項を満たすかどうかを先に確認してください。記載事項と端数処理のルールはShopifyのインボイス(適格請求書)対応まとめに整理しています。出荷時に同梱する納品書は別の書類なので、そちらはShopifyで納品書を作成・同梱する方法へ。
与信と督促の運用を決める
掛売でいちばん危ないのは、支払期日の管理が誰の仕事でもない状態になることです。
期日そのものはShopifyの中で持てます。注文に決済条件を設定すると支払期日が入り、Shopify Flowには支払期日の到来をきっかけに動く「Payment schedule is due」というトリガーがあるので、期日を過ぎた未入金へのリマインドは自動化できます。自店のプランや設定でどこまで使えるかは管理画面で確認してください。
一方で、与信そのもの(どの取引先にいくらまで掛売を許すか)は仕組みでは決まりません。小さく始めるなら、次のルールを決めるだけで十分回ります。
- 初回取引は前払い — 掛売は2回目以降から
- 1社あたりの上限金額を決める — 未入金の合計がその金額を超えたら出荷を止める
- 入金予定を1か所で管理する — 注文番号・請求日・期日・入金日をスプレッドシートか会計ソフトに1行ずつ。件数が少ないうちはこれで足ります
- タグを付ける — 注文に
掛売のタグを付けておくと、未払い注文の絞り込みが速くなります
会社アカウントや取引先ごとのカタログを使う本格的なB2B機能は、プランによって使える範囲が変わります。自店のプランで何が使えるかを確認したうえで、まずは下書き注文+請求書送信と、上のような手運用の組み合わせから始めるのが現実的です。
まとめ
- Shopifyの「請求書を送信」は支払い依頼のリンクを送る機能。経理書類の請求書ではない
- 依頼が来たら、まずカード払いか振込かを確認する。それで作業が決まる
- 掛売にするなら手動決済で銀行振込を足す。注文確認メールは入金証明ではない
- 請求書PDFはOrder Printerのテンプレート編集か帳票アプリ。事業者向けならインボイスの記載事項も確認する
- 与信と期日の管理はShopifyの外。初回前払い・上限金額・入金予定表の3点を先に決める