「領収書を発行してもらえますか」という問い合わせは、ストアを続けていればいつか来ます。そのとき管理画面を探しても、目当てのボタンは見つかりません。
先に結論を書きます。Shopifyの管理画面に「領収書を発行する」機能はありません。対応は「注文確認メールで代用する」「無料のOrder Printerで印刷する」「領収書アプリを入れる」の三択です。どれを選ぶかは、お客様が求めている書類のレベルで決まります。
まず「領収書ください」の中身を確認する
ひとくちに領収書と言っても、求められているものは3段階あります。
- 支払いの記録が欲しいだけ — 個人のお客様に多いケースです。金額・日付・内容が分かればよく、注文確認メールで足りることがよくあります
- 経費精算用の整った書面が欲しい — 宛名と但し書きの入った、いわゆる領収書の体裁が要るケースです。勤め先に出すための書類なので、メールの転送では通らないことがあります
- インボイス(適格請求書)が要る — 買い手が事業者で、仕入税額控除に使うケースです。登録番号や税率ごとの内訳など、決まった記載事項を満たす必要があります
ここで押さえておきたいのは、国税庁が「所定の事項が記載された書類であれば、領収書や納品書など書類の名称を問わずインボイスとなる」としている点です。つまり3は「インボイスという特別な書類を作る」話ではなく、「いつもの領収書に必要な項目を足す」話です。逆に、どんなに体裁が整っていても記載事項が欠けていればインボイスにはなりません。
無料でできる範囲: 注文確認メールとOrder Printer
1と2は、アプリ代ゼロでもある程度まで対応できます。
注文確認メールは、注文内容・金額・日付の通知としてまず使えます。 注文のたびに自動送信されます。ただしこのメールは注文の通知であって入金の証明ではありません。銀行振込や代引きでは送信時点でまだ未払いなので、支払いの記録として案内できるのは決済が完了した注文に限ります。テンプレートは管理画面の設定から編集でき、Liquid変数で動的な注文情報を組み込めるので、店舗情報や但し書きに相当する文言を足しておくこともできます。「領収書が必要な方は注文確認メールをご利用ください。書面が必要な場合はご連絡ください」とFAQに書いておくだけで、問い合わせの多くはここで止まります。
管理画面が標準で印刷できるのは明細表(金額の載らない出荷用の書類)までです。 領収書の形で印刷したければ、Shopify製の無料アプリ Shopify Order Printer を入れます。注文画面から請求書・領収書を含む書類を印刷でき、一括印刷は最大50件、テンプレートはHTML・CSS・Liquidで編集できます。
ただし落とし穴が2つあります。アプリの対応言語は英語のみで、既定のテンプレートは日本の領収書の体裁(宛名・但し書き・収入印紙欄)を想定していません。日本の商習慣に合わせるにはLiquidの編集が必要で、ここが実質的なハードルになります。一度テンプレートを作ってしまえば、あとは注文を選んで印刷するだけです。宛名の差し替えなど注文ごとの調整が頻繁にあるなら、日本向けの領収書アプリを検討する段階です。
なお、出荷時に同梱する納品書は領収書とは別の書類です。そちらはShopifyで納品書を作成・同梱する方法に分けて整理しています。
インボイスとして出すなら記載事項を確認する
事業者のお客様からインボイスを求められたときに確認する記載事項は、次の6つです。
- 買い手の氏名または名称(宛名)
- 売り手の氏名・名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目がある場合はその旨)
- 税率ごとに区分した対価の合計額と適用税率
- 税率ごとの消費税額
小売業のように不特定多数のお客様と取引する業態では、適格簡易請求書という簡略版が認められています。宛名を省略でき、税率と税額はどちらか一方の記載でよくなります。使えるのは小売業などの対象事業に限られますが、ECで一般消費者に物販をするストアは通常ここに入ります。サービス販売など業態によっては対象外になるため、自店が該当するかは確認してください。
登録番号は、適格請求書発行事業者として登録した事業者に発行されるものです。免税事業者のままではインボイスの要件を満たす領収書は出せませんが、インボイスではない普通の領収書を出すこと自体に問題はありません。お客様のほとんどが個人の消費者なら、インボイス対応がそもそも不要なケースも多いはずです。登録するかどうかは売上や取引先の構成に関わる経営判断なので、迷ったら税理士に相談してください。
収入印紙は「紙で5万円以上」がライン
紙の領収書を発行する場合、売上代金の受取書は記載金額が5万円未満なら印紙税が非課税です(国税庁タックスアンサー)。客単価が数千円から数万円のストアなら、印紙を意識する場面はほとんどありません。
5万円以上の注文で紙の領収書を求められたときが検討のタイミングです。クレジットカード払いの場合の扱いや、PDFなど電子発行の場合の扱いには細かい論点があるため、この記事では断定しません。高額商品を扱っていて頻繁に発生するなら、一度税務署か税理士に確認して自店のルールを決めておくのが確実です。
問い合わせが来たときの返信を型にしておく
領収書対応は、1回ごとに考えると面倒で、型を作れば数分で終わる仕事です。返信の例を1つ置いておきます。
件名: 領収書の送付について(ご注文 #1234)
◯◯様
このたびはご注文ありがとうございます。
◯◯(ストア名)でございます。
ご依頼いただいた領収書をPDFにてお送りします。
宛名・但し書きは以下の内容で作成しております。
変更のご希望がありましたら、このメールにご返信ください。
宛名: ◯◯様
但し書き: お品代として
今後ともよろしくお願いいたします。
あわせて、注文番号を必ず聞くこと、FAQか特定商取引法のページに領収書の発行ポリシー(発行方法・宛名変更の可否・再発行の扱い)を書いておくことをすすめます。案内が先にあれば、問い合わせの件数そのものが減ります。
まとめ
- Shopifyに領収書の発行ボタンはない。注文確認メールでの代用・Order Printerでの印刷・アプリの三択
- 個人のお客様の多くは注文確認メールで足りる。整った書面はOrder Printer+Liquid編集で無料で作れるが、日本の体裁にするには手がかかる
- 領収書という名前のままでも、記載事項を満たせばインボイスになる。BtoC中心なら適格簡易請求書の要件で考える
- 紙で5万円以上なら収入印紙のライン。クレジットカード払いや電子発行の細かい論点は税務署・税理士に確認して自店のルールを決めておく