返品ポリシーは、揉めてから作ると必ず自店に不利な形になります。個別の対応を積み重ねた結果、店ごとの基準ではなく「言ってきた人だけ通る」運用になるからです。
先に押さえるべき前提を書きます。通信販売には法定のクーリング・オフ制度がありません。その代わり、返品の可否や条件(返品特約)を広告に表示していない場合、消費者は商品の受領日から8日間、送料を負担して返品できます。特約を表示していれば、その特約が適用されます(消費者庁 特定商取引法ガイド)。
つまり、お客様の都合による返品については、書けば自店のルールが効き、書かなければ8日間の返品を受けるという構造です。ポリシーを書くのは接客のためだけでなく、この効力のためです。
ただし特約で制限できるのは、この「お客様の都合による申込みの撤回・解除」の範囲です。不良品・誤配送のように商品が契約の内容に適合していない場合の責任は、返品不可と書いても消えません。次の節で書き分けを扱います。
決めるのは5項目だけ
ポリシーの文章を書く前に、次の5つを決めます。ここが決まれば文章は自然に書けます。
- 返品を受けるか — 受ける/不良品のみ/受けない
- 期間 — 受領後◯日以内。連絡の期限と、商品が届く期限を分けて書くと揉めません
- 状態の条件 — 未使用、タグ付き、付属品と外箱が揃っている、など
- 送料の負担 — お客様負担/自店負担/理由によって分ける
- 返金の方法 — 同じ決済手段への返金、次回使えるクーポン、交換のみ
アパレルでよくあるのは「サイズ交換は1回まで自店負担、それ以外の返品はお客様負担」という組み方です。交換を受けやすくして購入のハードルを下げ、返品の理由をサイズに集中させる意図があります。
「不良品」と「イメージ違い」を分けて書く
いちばん揉めるのがここです。この2つを同じ条文で処理しようとすると、どちらの側にも説明できない基準になります。
- 不良品・誤配送 — 自店の責任です。送料は自店負担、期間も長めに取ります。写真を送ってもらう手順を書いておきます
- イメージ違い・サイズ違い — お客様の都合です。受けるかどうかは自店の判断で、受けるなら送料負担と状態の条件を明記します
書き分けると、CSの初動で判断が要らなくなります。問い合わせが来たら「どちらのケースか」を確認するだけで、あとはポリシーどおりに進みます。破損・不足で届いたときの具体的な手順は破損・不足で届いたときの対応フローにまとめました。
書く場所は4か所
書いた内容が効くためには、お客様が買う前に読める場所にある必要があります。
- 返品・交換ポリシーのページ — 本体です。Shopifyの管理画面のポリシー設定に入れると、チェックアウトのフッターから自動でリンクされます
- 注文の最終確認画面 — インターネット通販では、広告だけでなく申込みの最終確認画面でも返品特約を確認できる状態にしておく必要があります。Shopifyのポリシー設定に入れておけばチェックアウトからリンクされるので、そこが空になっていないかを実際のチェックアウトで確認してください。商品によって条件が違う場合は、どの商品にどの条件が適用されるのかが対応づけて分かる形にしてください(詳細を共通ポリシーへのリンクで見せるのは構いませんが、対象商品と条件の対応が分からない書き方は避けます)
- 特定商取引法に基づく表記 — 返品特約は表示義務のある項目です。ポリシーページと矛盾しないようにします
- 商品ページ(該当商品だけ) — 「セール品は返品不可」「オーダー品は返品不可」など、例外がある商品には個別に書きます
記載が食い違っていると、どれが自店のルールなのかを説明できなくなります(お客様に有利な解釈をされる前提で考えたほうが安全です)。文章を1か所に置き、残りはそこへリンクする形にしてください。
例外を先に決めておく
運用が破綻するのは、ポリシーに書いていないケースが来たときです。よく来るものを先に決めておきます。
- セール品・アウトレット — 返品可否を明記する。不可にするなら商品ページにも書き、最終確認画面でもその商品に適用される条件が分かる状態にする
- 下着・水着・食品・化粧品 — 衛生上の理由で不可にするのが一般的。理由まで書くと納得されやすい
- オーダー・受注生産 — 不可にするのが通常。注文確定前の確認手順を作る
- 複数回の返品 — 同じお客様から繰り返される場合の扱い。書きにくいですが、内部の基準は決めておきます
- 期間を過ぎた連絡 — 受けるかどうか。例外を作るなら「1回だけ」など内部で線を引きます
内部基準と公開する文章は分けて構いません。公開文はシンプルに、内部にはCS判断用のメモを残す形が現実的です。
返品率は「下げる」より「理由を減らす」
返品率を数字として下げようとすると、返品を受けにくくする方向に行きがちです。それはCSの負荷と評価の悪化を招きます。効くのは理由を潰すほうです。
- サイズ違いが多い — サイズ表と実寸、着用サイズの記載を増やす(アパレルのサイズ表の作り方)
- イメージ違いが多い — 商品画像の枚数と順番を見直す。色は光源で変わるので、着用写真と物撮りの両方を出す(商品画像は何枚・どの順番で並べるか)
- 届いた状態への不満 — 梱包の見直し。破損が出ているなら資材から変える
返品の理由は、CSに記録が残っていれば集計できます。理由ごとの件数を月次で見て、多い順に潰すのが最短です。
まとめ
- 通信販売に法定のクーリング・オフはない。返品特約を表示しなければ受領日から8日間の返品を受ける
- 決めるのは、受けるか・期間・状態の条件・送料負担・返金方法の5項目
- 不良品と、イメージ違いは分けて書く。CSの初動で判断が要らなくなる
- 書く場所はポリシーページ・特商法表記・該当商品ページ。内容を食い違わせない
- 返品率は「受けにくくする」より理由を潰す。理由の集計が最初の一手